中絶~僕は君を殺したい~
3‐3 バッティングセンター




「クソ」



空振りしたバットをホームベースにたたきつけた。



「…なぁいつき。おろせよ」



カキーン。



「そう、するか」


ブォン。



「それか知らんふりするか?あきちゃんシングルマザーでもいいって言ってんだろ?」



カキーン。




「お前の気持ちはわかるけどさ。げんかいなんだって」




バットを杖のようにしてゆうやがぼくの方を見た。




「これからさきはお前が支えてやらなきゃダメになる。」




「…」



ブォン



「…もとめるばかりではいつかダメになる。カフェの時もほんとうは不安な気持ちを言わない方がいい。お前よりあきちゃんの方が不安なんだからさ」




「…子供が子供をうむなってことでも言いたいのか?」




「そう言うことじゃないよ。」



あきれたようにため息をこぼした。



ぼくはゆうやのこういうところがきらいだ。



見下してやがる。




「あー!当たらね」



入口のとびらをけり、ゆうやには目もくれずバッティングセンターを後にした。




「…そういうとこをなおせって」



携帯電話の電波のようにせのたかいじゅんばんに並んでいるバット立てにバットをなおしてゆうやは言った。



コラー、とおくれてバッティングセンターのおじいさんがさけぶ声が聞こえた。
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