中絶~僕は君を殺したい~
6‐6 ねむったふり




「ちがうこと考えてたでしょ?」



「…」



「さいきん二人でいたときのことを思い出すの。ほんとうは電話がかかってきたときうれしかった。」



タバコに火をつける音がしてゆっくりと息をはいた。



「でもやっぱり過去ににげちゃダメだと思うよ」



じぶんにいいきかすように続ける。



「わたしも結婚するんだ。ながくつきあっていたかるがまたよりをもどしてくれってしつこくてさ。でさ、いってやったんだよ。よりもどすなら結婚する気でいてねって…それで重く感じてくれたら良かった。ううん…ほんとうはこわかっただけ。」



「…」



「今日は過去におわかれしにきたんだよ。わたしたちは。これから未来をみなきゃ。現実をみなきゃダメ。」



「…」



「わたしもつよくないから。」



たくさんの人をきずつけた。



ぼくはまた一人きずつけた。



なにも出来ないじぶんがなさけなくて。



みじめで。



それでも勇気が出なくて。



どこかでにげばしょをさがしている。



…ごめん、とこころの中でつぶやいた。



…ほんとうにごめん。
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