中絶~僕は君を殺したい~
8-6 ねむるあき




眠り姫は王子様のキスでめざめるって話を思い出した。




文化祭でやった劇だ。




ぼくは小人4だった。



王子様がゆうやでお姫様があきだった。




ぼくが王子様ならあきを目覚めさせることが出来ただろうか。




悪い夢から目覚めさせてあげたい。



目を閉じるとすべてがうそだったんだ。



げんじつは幸せで



こんな夢を見たって話をトーストをやきながら話すんだ。



マーガリンは体に悪いからやめとけっていっているのにあきはマーガリンをぬろうとする。




それに紅茶。



ダージリン。アールグレイ。ポピュラーな紅茶の名前は覚えるくらい飲んだ。



そうしているうちに子供が起きてきてさ。



・・起きてくるんだ。


ぼくは泣いた。



びょうしつで眠るあきの枕元で声を殺して泣いてしまった。



ごめん。



ぼくは何も出来なかった。



痛みもない。子供を感じることさえなかった。


でもあきはその体でちょくせつ、かのじょを感じていた。



ごめん。


なみだはとまらなかった。
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