この胸いっぱいの愛を。





─────好きな人を振り向かせるためなら、何だってやってやろうって思える。




─────バカみてぇだけど、男ってそーゆー生き物からさっ!









……………あの言葉。


そして…………………




─────神田先輩をテニスで倒すこと……
ですよね?






一見矛盾してる、二人の言葉。


だけど………




あの時の駿河先輩は、いつもと違ってはにかんだような笑顔で。


さっきの佐野先輩だって、嘘であんなことを言うとは思えない。




───────だとしたら。






「もしか、して……」


脳裏に浮かんだのは、怒りで我を忘れて不良達を殴り続ける駿河先輩の姿。

あの怒り方は、尋常じゃなかった。


“自分の部活の部長”。

それだけで、あそこまで怒るだろうか。


バラバラだったパズルのピースが、次々にはめられていく。

そして、駿河先輩が将兄に無邪気な笑顔で話し掛けていたのを思い出した時。


ピースは、全て揃った。









「駿河先輩は、将兄のことが……




 好き。」


あの日のような、強い風が吹き荒れる。

風の音しか聞こえない、この場所で……




私はいつまでも、立ち尽くしていた。




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