この胸いっぱいの愛を。



「お疲れさまでした!」

私は走り込みを終えた先輩にタオルとドリンクを渡して、ボールを取ってくるために倉庫に向かった。


……今日は、さんざんだったなぁ。

先生に寝てたのバレたし、変な勘違いして授業中に叫んじゃったし。

起こされた直後だったからまた先生かと思ったら、健吾だったんだもん!

紛らわしいっつーの!!


あの後アユにからかわれたし……


「またモテ度アップだね」って、意味わかんないんですけど。




そんなことを考えていたら、いつの間にか倉庫に着いていた。

体育倉庫じゃなくて、テニス部専用の倉庫。


でも………




いずれにしても、倉庫はあまり好きじゃない。

狭い空間と、埃っぽいニオイが……


あの時のことを、思い出させるから。




「駿河先輩、どうしてるかな……」


ふと頭に浮かんだのは、先輩のこと。

今まで一度も欠かさずに練習に参加していた駿河先輩の姿がないのは、とても不自然で。

ムードメーカーだったこともあって、先輩がいないと部活中もいつもより静かだし。


……なんだかちょっと、寂しいかも。




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