この胸いっぱいの愛を。



多分。


どんなにテニスが上手くなっても。

例え、テニスで彼を超えたとしても。


あの笑顔が俺に向けられることは、きっとない。




心のどこかで、そう確信していた。

……ただ、認めたくないだけで。


認めてしまえば、心が壊れそうだった。

好きな人の大切な人を、傷つけてしまいそうで怖かった。




部長はあぁ見えて、優しい人だから……

俺が気持ちを打ち明けても、拒絶するようなことは、きっとない。


だけど、俺のこの気持ちが、きっと彼を苦しませてしまう。

今まで自分を慕っていた後輩が、実は自分を好きだったなんて知ったら………

きっと、衝撃を受けるに違いない。

そう考えると、どうしても踏みとどまってしまう。


それに………

気持ちを伝えたいなんて、俺の単なるエゴでしかないから。

そんな下らないもので、好きな人を苦しませるのは嫌だから。






こんな風に、何度も諦めようとしたのに……




「ずるいっすよ、部長……」


彼のことを知れば知るほど、想いは強くなっていく。


大切な人を守ろうとする姿も。

俺に向けられたわけじゃないのに、そのカッコ良さがどうしようもなく……憎い。


「カッコ良すぎなんだよ、馬鹿……」


忘れようと、すればするほど。

やっぱり俺はあの人が大好きなんだと、思い知らされる。







――――一番バカなのは、俺自身かもしれないな。




そう呟いた言葉は、雲一つない青空に吸い込まれて、消えていった―――――――……。




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