この胸いっぱいの愛を。



――――――――………




「ハァ、ハァ………っ」


どこに向かってるのかなんて、自分でもわからない。

自分の体が病原菌に蝕まれていることも忘れ、私はとにかく走った。


……胸の中に渦巻く全ての感情を、振り払うように。









『どっちから告白したの?』


その問いの答えを、聞きたくないと思った。

聞いてはいけないと、私の中にいるもう一人の自分が叫んだ。




……………そっか。


私、ショックだったんだ。

将兄に彼女ができたこと。




心のどこかで、将兄は自分だけの物だって、そう思ってた。


みんなに怖がられてるけど、私には優しくて。

困ってる時には、いつでも飛んできてくれて。

ワガママだって、「仕方ないな」って言いながらも、いっつも聞いてくれた。


だから私は、将兄を独占してるような気でいた。




……でも、違ったんだね。


将兄は……

将兄の心は、私のものじゃない。


彼女さんの幸せそうな顔を見て、初めて、そう思い知らされた。




「っ」


なんでこんなに、悲しいんだろう。

祐兄に彼女がいるって知った時は、こんなに悲しくなかったのに。

どうして、こんなに――――











ドンッ




「キャッ」

「うぉっ!?」




.
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