この胸いっぱいの愛を。



「そんなに驚くなよ(笑)」


この、声は………




「健吾?」


────谷口健吾(タニグチ ケンゴ)。


私と同じクラスの男子。

四月末の席替えで隣になって以来、
よく私に話し掛けてくる。

部活に入った当初は「同じクラスの人」ってだけ認識してたけど、今ではちゃんとした友達だ。




「よっこらせ……っと」


健吾は持っていた荷物を肩から下ろして、ベンチに腰掛けた。


「……健吾、オジサンみたい」

そう言って笑うと、
健吾は不満げに口を尖らせる。


「仕方ねーだろ、荷物重いんだから」

文句を言いながら肩の骨をポキポキと鳴らしている健吾を尻目に、私はチラリと時計を見た。

長い針が、6を指している。


「おっそいなぁ……

 ………あ。」


思い出した。

今日って、2、3年生はロングホームルームがあるんだっけ。

朝練の時に将兄から聞いたの、
すっかり忘れてた。




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