「宇崎くん、今日は……ありがとうございました」



話が終わったのだろうか?

というか、俺は特に何もしていなかった。



放課後、準備が整ってから教室に来たとき、この男おは俺を見ていかにも『ヤバい』という顔をしていた。

その時俺は一言だけ、口を開いた。



「今度は逃げるなよ」



菅原が俺を送り出してきたのは、この男が自分を見て真っ先に逃げたからだったのかもしれない。

菅原は自分の代わりに俺を立ち会わせることがよくある。

俺は菅原の陰でもあるんだ。



その後、話は順調に進んだようで、スッキリとした声の彼女の声に振り向いた。

振り向きながら言った。



「いや、これくらい……い゙!?」

「……ど、どうしました?」



俺の目に飛び込んできた光景に絶句。

男の方が泣いてる。



オイオイオイオイ、自業自得だろ?

優しいからってなんでもかんでも許すと思うのは完全に間違ってるだろ。

泣きたいのはお前じゃなくてこの人なんだっつの。



その後俺たちは校舎を出た。



あの時菅原に話しかけていた男、誰だ……。

引っかかるその思いを抱えて。
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