悪逆の檻


手品師が最後の2枚を開く。

同時に口を開く。





「甘いのはお前だ、バーカ」




Aとジョーカー。



「は? え?」



恋は、配られたカードを一斉に裏返した。



そこには、キレイにペアになったカードが並んでいた。


「ば、馬鹿な!! どういうことだ!」

「あんたの負けって、ことだよ」

恋はキングのペアを、中央に捨てる。




「いや、1枚足りないだろ! 隠したのか!? だとしたら、やり直しだぞっ!」


手品師は、椅子を蹴飛ばし、立ち上がる。


「やめとけよ。 殴りかかったら、即爆破かもしれないんだぜ? それとも、試してみるか?」


「ぐっ。 いや、しかし、このゲームは無効だ。 カードが揃っていない状態だったんだからな! はやく出せよ! 隠したんだろっ!?」


「んなこと、しねぇよ。 それに、あんたが言ったんだぜ。 『血はベタついて、嫌だ』ってな」


最後の2枚。

手品師が、再び手に取る。


他のカードよりも、やや厚い。


「まさか・・・」


ジョーカーの裏にはAが、血で貼り付いていた。






「配ったのは、他でもないあんただ。 ディールミスだとしても、その時点であんたの負けなんだよ。 危機感がなさすぎるんじゃないか? 甘々だったな」





手品師は、力なく、椅子に落ちた。



「そうか・・・あの時か。 最初にトランプを叩いた時か・・・」


もう手品師は、どこも見ていない。

ただ、虚空を見つめ、うわ言のように呟いている。


「いいね。 君は・・・最初から信じていなかったんだ。 それでいい。 それが・・・勝者だ」




「じゃあな」


最後の2枚を、手放す。





ほぼ同時に、手品師が弾けた。













ーーーーーーーー大元 泰・死亡
                死因『甘々』
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