ホットレモンの憂鬱
3.すれ違い

俺の部屋のソファーに、ちょこんと体を預ける真愛に、聞きたいことがたくさんあって、一番聞きたかったことから問い掛けてみた。


「いつから…、俺のこと好きだったの?」

「…ほんとに覚えてないの?」

見上げた顔がいじらしそうに、俺を見つめる。


「え…、何が…?」

「まだ入学したての頃。…やっちゃんがぶちまけた鉢植えの土、一緒に片付けてくれたの、覚えてないの?」

「…ごめん」

耳を掻いたり弄る俺。


「そっか…」

そう呟いて、淋しそうに俯いた。

「大樹は、服汚れるよって声かけて来て、一緒に掃除してくれたよ。自分の手が汚れるのなんて気にもとめないで。あぁ、優しいなって…思ったら…目が追いかけてた」



…あれ?

今…、頭の片隅に浮かび上がった光景。

一緒にいた子がぶちまかしたのに、懸命にこぼした土を手の平で掬い出す…、黒髪で飾り気のない女の子。

顔を真っ赤にして、今にも泣きそうだったから、手伝ってやったら。

ありがとうとごめんなさいを繰り返して。

最後にありがとうって微笑んだ顔…、可愛かったよなぁ…。



……!?
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