いつもそこに
第一章 コン・ブリオ
今日もまた学校での勉強は終わった。夏休みだって叫んでる子もいれば、無言で教科書をリュックに詰める子もいる。
私はどちらかと言えば後者-しゃべるのはそんなに得意じゃない。だから、黙ったまま身の周りの整理をする。
「えー、それじゃ有意義な休日を過ごすように。懇談で印鑑を忘れないでくださいね、はい号令。」
起立、姿勢、礼をする。掃除は終業式兼生徒集会前に既に終わっていたから、いつものように号令の後に机を下げる必要はなかった。「夕夏ー!!!帰ろー!!!」と言う声が教室のいずこからか出てきた。晴代と朱実だった。待たせないようにリュックを背負い、3人揃って廊下に出た。駐輪場までの会話で真っ先に口を開いたのは晴代だった。
「夏休みかぁ、暑いし宿題たんまりだし、やってらんね…。ねぇ夕夏、朱実、次の月曜日何か予定ある???」「ごっめん晴代、修学旅行でのパスポートの写真撮りに行かなきゃいけないからバツ!!!」「え、それなら一緒に行こうよ。あたしそれが言いたかったんだし、それで夕夏は???」「ごめん…あたし塾が…」
正直に言えば私も2人と行きたかったけど、やっぱり塾をさぼる勇気もでなかった。
「まぁ夕夏の塾は厳しいもんね、晴代もああいう所行ったら1回くらいは古典と英語の補充かかんなくなるわよ。」「あたしはどこ行っても勉強しないから今のままがいいの。朱実こそ行けばぁ???」「却下~♪」
いつもやりとりに私は入らない、でも聴いてるだけが楽しい。誰に対してもそうだった。

丁字路で2人と別れ、私は今日も授業のある塾に向かった。教科書がそのまま教材になるのでわざわざ家に寄る必要がなくてよかった。
月極の駅前の駐輪場に自転車を置き、そこから少し離れたビルに入ってエレベーターが来るのを待っていた。その時、入口の自動ドアから人が1人飛びこんできた…
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