同居ゲーム
また、長い沈黙。



「俺は、小学生の頃に戻りたい。」


「ただの友達に戻るってこと?」


無言で宏樹は頷いた。



「あたしは無理。
宏樹が由宇希をそういう目で見てるのを横で見てるの?」


「俺は、由宇希と付き合いたいとは思ってない。
ただ好きなだけ。」



それって…。



今さらながら、混乱してきた。



宏樹があたしのこと好き?



信じらんない。



膝に乗せた手を凝視して、気持ちを落ち着かせる。



「あたしはもう由宇希としばらく普通に話せそうにない。」


「そうだな、俺はお前とは話せないし。
話したくないし。」



横で繰り広げられる、縺れ合い。



あたしはどうしたらいいのよ。




あたしは、宏樹は友達。



信頼してる。



それだけ。



「宏樹、あたしとは普通に話せるの?
一応、今のを告白とするんなら、あたしは断る。
フラれたことになるんだよ?」


「あれだろ、片想いってやつってことだろ?
なら別に友達に戻るってことも出来るんじゃね?」



………宏樹の考えがわからない。



「彩華とは?
友達?」


「まぁ、な。」


「じゃあ、普通に戻ろう。」



戻れるなら。



無言の彩華を横目で見る。



俯いていて、顔が見えなかった。



「………あたし、帰る。」


「俺も。」


「宏樹は彩華と一緒に。」



口を挟ませる隙を与えず、あたしは言葉を続けた。



「仲直りするの。」



なんか幼稚園児に言うセリフだなと後悔しつつ、背を向ける。



……何も頼まず、席だけ借りてしまった。 



せめて、レジの前でお礼を呟いてあたしは店を出た。
















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