また、君に恋をする
由紀は極力明るく振る舞うようになっていった。

言い慣れない「お父さん」や「お母さん」の言葉も、自然に言えるように心掛けた。

気を使っている事を悟られないように、いつも笑顔を絶やさない。

だけど、一人になると溜息が溢れる。


「由紀…無理してないか?」


そんな由紀に真っ先に気付き、辛そうな時に手を差し延べるのは勇人だった。

二人きりになると、優しい目で見つめられる。

何も言わなくても全て分かっているようなその眼差しに由紀は救われていた。


『こんな所が好きだったのかもしれない…』


勇人の包み込むような優しさに触れる度に由紀はそう感じていた。
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