また、君に恋をする
「本当に大丈夫か?」


和美が去った後も勇人は由紀のそばを離れようとしなかった。

何度大丈夫だと言っても、不安そうに見つめている。

大切にされているようで嬉しくなる。


「顔色、大分良くなってきたな」


勇人は少しだけホッとした顔をして微笑んだ。


「ごめんなさい…」


思わずそう呟くと


「謝る事じゃないだろ?」


と頭を優しく撫でてくれた。

大きくて温かい手。

触れられた所から熱が広がり、全身が熱くなる。


「熱、あるのかもな」


恥ずかしさから赤くなった顔を見て、勇人はおでこに手を当てた。

鼓動がたちまち早くなる。

この時初めて、自分が勇人を男として意識し始めている事に由紀は気付いた。

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