君との期待値
今日ハンカチ持ってないから手の甲で服しかないのに。
「ひっ……く」
悲しいって言うより悔しい。
拓真に嫌われてる理由も知らないで避けられてることが。
理由が分かれば少しは納得できたかもしれないし。
もう、頭ぐちゃぐちゃで訳分かんないよ。
「あの……」
突然背後が呼びかけられた。
誰もいないと思っていた私は慌てて振り返る。
「亜姫先輩、ですよね?」
見たこともない少年に名前を呼ばれた。
誰……?
少年は階段を降りてきて焦った様子でハンカチを手渡した。