君との期待値
目尻に浮かんだ涙を少年が拭う。
「先輩って、夏弥のことかなり好きみたいですね。
あと、思ってたより全然可愛いです」
にっこりかわいらしい笑顔を向ける。
キュンッ
可愛すぎる。
これが私の思ってた後輩そのものだ。
少年の台詞はいつもなら真っ赤になって動揺するところだけど、
それを忘れるくらいその笑顔の可愛さに胸を鷲掴みにされた。
天使だ。
天使のスマイルだ。
何なんだ。
物腰は大人っぽいのに、笑顔は少年なんて。
思わず抱きしめたくなる。
少しずつ彼との距離が縮まる。
「先輩?」
不思議そうな少年の顔で我にかえる。
はっ。
何してるんだ私は。
近づきすぎた私は慌ててまた少年と一定の距離に戻る。