俺のココ、あいてるけど。
 
「・・・・綾じゃダメなんですか?」

「・・・・」

「綾のことを好きになる可能性は1パーセントもないですか?」

「・・・・」

「なんで綾じゃ・・・・綾じゃないんですか・・・・」


梅村綾は小さな声で、絞り出すようにか細く言った。

暗くて顔は見えないが、きっと唇を噛んで耐えているのだろう。

・・・・涙声だった。


「・・・・悪い。もう降ろしてくれ」


俺はそれだけ言って車を降りた。

梅村綾に返せる言葉もなければ、かけてやれる言葉もなかった。


“自惚れ”・・・・のほかに適当な言葉は見つからないが、近い未来にこんなことが起きるんじゃないかと薄々感じてはいたんだ。

それを避けるために距離を置いて接してきたし、必要以上の会話をしないようにしてきた。

でも・・・・。

“恋に恋”をしていると思ってきた梅村綾が初めて本気を見せた。


心が揺れる・・・・ことはなかった。

ただ、困惑した。


「もぉ!今のは冗談ですよぉ!登坂さんが元気ないから、ちょっとからかっただけですってば♪」
 

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