俺のココ、あいてるけど。
 
バイトとはいえ、こういう場面は何度も経験してきたけれど、気持ちの重さが全く違った。

声も震えていたと思う。

“正社員”として雇ってもらったのだから、いつになく身が引きしまる思いだったし、不安も同じくらいにあった。

その不安を取り除くように、とにかく一生懸命に口を動かした。


「及川君と安藤君は全くの初めてだが、長澤さんは今言ったように経験者だ。先週入ったパートさんもいることだし、長澤さんに聞けることは聞いて、早く全員の能力が上がるように努力しよう」


あたしのあいさつが終わると、店長はそう締めくくった。





「形だけかもしれないが、長澤さんの指導は登坂、君に頼むよ」

「分かりました」


ドキドキのあいさつが終わり、いったんバックヤードに戻ったあたしたち新人3人と店長・・・・と、登坂さん。

登坂さんにあたしの指導を頼んだ店長は、男の子2人を連れて足早にバックヤードを後にした。


「登坂誠治。以後よろしく」


・・・・登坂誠治さん。


「はい。長澤未来です、よろしくお願いします」
 

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