俺のココ、あいてるけど。
 
だけど、登坂さんの口以外からは本当のことは知り得ない。

聞く勇気もないし、あたしに知る権利なんて・・・・どこにもない。

“夢は夢でしかない”

あのときそう納得させたはずなのに、最近になってタチの悪い風邪みたいにぶり返しているんだ。


そういうときに限って、登坂さんはいつも以上に優しくて、よく話しかけてくれて・・・・。

嬉しい反面、不安にもなる。


麻紀さんにもあたしと同じように笑いかけていたの?

麻紀さんとどんな話をしたの?

どれくらい好きだったの?


登坂さんの後ろに、顔も知らない“麻紀さん”の影がちらつく。

どうにもならないことなのに、それでも否応なしに麻紀さんと比較してしまう。


「長澤、最近調子でも悪いのか? 浮かない顔して・・・・」

「・・・・そんなことないですよ」

「そうか? でも、何かあるなら言ってくれよ? 心配だから」


こんな優しさに触れただけで、どうにも泣きそうになる。

あたしにだけ向けられる優しさだったらいいのに・・・・そう願わずにはいられなかった。
 

< 277 / 483 >

この作品をシェア

pagetop