俺のココ、あいてるけど。
 
あたしが歩美さんと会わなかったら、自分が麻紀さんと会わなかったら・・・・って。

そう言って、登坂さんは苦しそうに声を絞りだした。

どうして抱きしめたのか、頭では分かっているのに、言葉にするのは今もとても難しい。

こうも言った。


「ごめん。全然だ、俺・・・・」


登坂さんのか細い声が、あたしの涙腺をみるみる刺激していく。

落ち着いていたはずの涙が次々と目に溜まって、溢れてきて。

どんどんどんどん、流れていく。


「・・・・登坂さん」


もう話さなくていいよ。

全部分かる・・・・とはすぐには言えないけれど、でも、あたしたちは“似た者同士”でしょ?

半分くらいなら登坂さんの痛みを持てるかもしれない・・・・ううん、もっと少ないかもしれないけど。


「ありがとうございます、正直な気持ちを話してくれて。やっぱりあたし、嬉しいです」

「長澤・・・・」


あたしは、強いあなたも弱いあなたも両方知って好きになったの。

もっともっと、好きになったの。


だから、言わせて───・・。
 

< 455 / 483 >

この作品をシェア

pagetop