太陽はアイスバーをくれた
太陽はアイスバーをくれた
 

「暑いなあ」
 

 
七月になった。
六月に入ってからは物凄い湿気との戦いであり、あまり降らなかった雨に多少苛立ったのも確かだ。
 

中だるみの時期である自分が遊ぶことのできる夏休みは今年だけだろうな。
 

自転車を漕ぎながら結衣は思った。
 

 
「ただいま、哲太さん」
 

「おう結衣」
 

 
暑くて仕方がないが、結衣は毎日夕方にこうして哲太に会いにゆく。
日中ずっと川で釣りをしている哲太に。
 

 
「暑いだろう結衣、ほらやるよ」
 

 
そう言って哲太が結衣に渡すのはラムネ味のアイスバーだった。
 

少し細めのサイズのアイスバーは腹を下さないようにという哲太の思いやりらしい。
少しうさん臭いなと結衣が思ったのは内緒だ。
 

哲太はいつもアイスボックスにこのアイスバーを入れている。
 

最近結衣は毎日この川へ来るのが当たり前になっていた。
哲太に会う為に。
 

 
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