ストロング・マン
ミーティングルームには私たちのチーム以外のチームも集まり、重苦しい雰囲気が漂っていた。
そりゃそうだ、これから銀行の方が来てくださるのだから。
コンコン、
「失礼します。」
ノックの音と共に、みんなの姿勢がさらにぴんと伸びた。
銀行の方はうちの営業担当の方と一緒にやってきた。
入ってきたのは三人。
一人はうちの営業担当の田中さん。なかなかのキレ者と評判の中堅に片足を突っ込んでいるくらいの年齢の方だ。
狙っている人も多いんだとか。
銀行の方の一人は、いかにも重役というような威厳のある方だ。
その人のまとう空気がすごく重い。
ちょっと、これじゃただの顔合わせじゃないんじゃなの。
と、先輩に文句を言いたくなるほどに、ただ事ではない雰囲気だ。
もう一人は、ん?
「え?」
私がうっかり漏れた声に反応して、みんなが一斉にこちらを振り返った。
しまった。またやってしまった。
おそるおそる私が声を漏らしてしまった元凶を見てみると、少し驚いた顔をしたあと軽く微笑み、
「担当の高橋 修也です。よろしくお願い致します。」
と爽やかに挨拶をした。