ストロング・マン


着いた先は山の中にある大人でもアスレチックを楽しむことが出来る場所だった。漫画好きと色白なことからよくインドア派に見られがちだが、こう見えてわたしは身体を動かすことが大好きなのだ。中学、高校と陸上部に所属していたくらいだ。高校の頃はよく修也と奈美と3人でパウンドワンに行ってスポーツをしてたっけ。

まあ修也と出かけて誰かに見られた次の日なんて、私も奈美も女子に殺されるんじゃないかってくらいの視線や陰口を言われたりするんだけどね。あの時は奈美がいたから修也と一緒に遊べたけど、二人で遊ぶなんて考えもしなかったし、周りにいろいろ言われたくなかったし、今日こうして2人で遊ぶ(修也曰くデートらしい)ことがちょっと新鮮で、やっぱり大人になったなあって感じる。


「次はあれに行こうよ!あれ!」


「おっけ。また俺の勝ちかな。」


「いや、次こそ勝つもんね!」



普段運動していなくせにお互い本気でやるもんだから結構すぐに限界がきて。2人で芝生があるところに倒れこんだ。
芝がひんやりしていてすごく気持ちいい。


「あー疲れたあ。」


「ほんとに。お前本気過ぎて周りの子ども引いてたぞ。」


「いいのっ。これだけのアスレチックを全力で遊ばないなんてもったいないでしょ。」


「確かに。こんなに身体動かしたの久しぶりでめっちゃ気持ちいいわ。」


横にいる修也を首だけ傾けて見てみると、すごく気持ちよさそうな顔をしていた。向こうも楽しそうでなんだかこっちも嬉しくなる。それにしても動いたから喉が渇いたなあ。


「喉渇いたから飲み物買ってこようかな。」


「あーじゃあ俺も。スポドリよろしく。」


修也ってば買ってこさせる気なの?まったくもう、優しさとか気遣いとかゼロなんだから。
そう思って立とうとすると、急にくらっとしてふらついてしまった。やばい、視界真っ暗だ。


「郁っ!」


修也の声とともに、温かい腕が私をがっしりと支えてくれて、転ばずに済んだ。その腕に捕まっているとすぐに視界も戻ってきて自分の足でしっかりと立つことが出来た。見上げると心配そうに私を見ている修也がいて。


「大丈夫か?」


「だ、大丈夫!ただの立ちくらみ!飲み物買ってくるから!」


「あ、おい!」


なんだか修也の顔を見ていられなくて、立ちくらみしたばかりだというのに駆け足で自販機に向かった。だって、恥ずかしくて。修也の腕が思っていたよりも男らしかったから。







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