ストロング・マン

奈美は私をじっと見つめてから不敵に微笑んだ。


「気づいた理由は2つ。

1つ目は修也が高校の頃郁のことを好きなことに気づいていたから。

2つ目は高校の頃それはもうアウトオブ眼中！だった修也のことが好きになるとしたら、修也を気にするような何かがあると思ったから。以上。」


そうばしっと締めくくってグラスを傾けた奈美は、お替わりのビールを注文していた。



・・・そうか、高校の頃からっていう話は本当で、奈美にも分かるくらいだったんだ。私って、本当に周りが見えてなかったんだなあ。って改めて実感した。


「そうなんだ。確かに、全然対象として見てなかったもんな。というか、高校の頃なんてファンが怖くてそんな感情持てなかったよね。」


「あーそれすっごくよくわかる。修也には悪いけどね。」


2人でその当時のことを思い出してふふっと笑う。


「でもさ、なんで今付き合えないの？さっき言ってたみたいに昔は対象として見れなかったのは正直しょうがないと思うけど、今はそんなの気にしなくてもいい年になったじゃない。私には障害はないかなって思うんだけれど。」


「それはやっぱり、私さ、ほら、今までがあれだったじゃない？だから、結局修也のこともダメにしちゃったらって思ってさ。今までも一応好きかなとは思って付き合い始めてはいるからさ。だから、この年になってなんだけど、ちょっとビビってる。」



少し悲しそうな目をして私を見る奈美にへへっと笑って見せた。恥ずかしいけどこれが本音。
もし大切な友達を傷つけてしまったら。今度こそ自分を許せなくなってしまうから。