ストロング・マン
聞くチャンスはすぐに訪れた。金曜の夕方に修也から「今日の夜暇?」と連絡がきたので2つ返事で承諾した。修也の元カノの件もあるが、ただ単に修也の顔を見たいと思っていたから。
「お待たせ。悪い、待たせたな。」
「全然いいよ。お疲れ様。」
急いで来てくれたのか髪が少し乱れていた。遅れたって言っても15分くらいで。社会人になると決まった時間に必ず出れるという保障もないし、事前に遅れるという連絡ももらっていたから私も時間前に着くことはなかったから気にする必要ないのに。すごく申し訳なさそうにしていて、ほんとに優しいなあって些細なことで感じられた。
私が気にしていないことが分かってやっとほっとした修也は、私の手を取り一件の和食のお店に入った。駅から少し離れたこぢんまりとしたお店だった。
中に入ってみるととても綺麗で、席はほとんどが埋まっていたが、修也が予約してくれていたおかげでスムーズに入ることが出来た。
「ここさ、かなり人気なんだよね。特に刺身の盛り合わせと、だし巻き卵が絶品。」
「へえー楽しみ!ていうか、私が洋より和が好きなのよく知ってたね?」
そう尋ねると修也は一瞬キョトンとしたかと思うと、鼻でふんと笑って、
「お前高校の時散々言ってたろ。「ご飯は洋より和だよ!」って。覚えてないわけ?」
その私をバカにしたような顔と言ったら。おしぼりを投げつけてやりたくなるわ、ほんと。
「うるさいなー。ちょっと昔のことだったから覚えてなかっただけですー。」
ふんと音がなるくらいそっぽを向くと、タイミング悪くビールが運ばれてきた。ビールに罪はないしね。
「「乾杯」」
キンキンに冷えたグラスに注がれたビールが身体に染み渡る。
「あー美味しい!」
「オヤジか。」
「うっさいわ。」