粉雪
それまで浮かれ気分で持っていた2枚のワンピ。


だけど隼人が居なくなると、急に虚しさを覚えた。


ため息をつき、最初に気になったワンピだけを持ってレジに向かった。


それから靴屋でワンピに合うサンダルを買い、店を後にした。


他に、欲しい物はない。


仕方なくクレープを買い、灰皿のあるベンチに座った。


空には雲ひとつなくて、まさに快晴。


突き刺す日差しに、目を細めた。


吐き出す煙は雲の代わりにもならず、何ひとつあたしを遮ってはくれなくて。


ため息ばかりが嫌でも出てきて。




♪~♪~♪

着信:隼人


―ピッ…

「はーい!終わった?」


だけど、隼人の電話で急に笑顔になるあたしは、きっと単純なんだと思う。



『終わった!
今どこ?』


「1階のテラスあるのわかる?
そこのベンチに居るよ♪」


煙草を灰皿に押し当て、辺りを見回した。


相変わらずの日差しは、あたしの肌をジリジリと焼く。


だけど気にならないほどに、こんなことが嬉しくて堪らないんだ。



『わかった!
なるべく早く戻るから!』


返事を聞き、電話を切った。


食べ終わったクレープのゴミを捨て、鏡で少しだけ化粧を直す。


これからのこととか、晩ご飯のこととかであたしの頭はイッパイで。


だから、何も気付けなかったんだ。


気付いてたら、こんな場所にはいなかったのに。



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