粉雪
「食べようよ!ね?」


『…だな。』


力なく笑う隼人に、あたしは精一杯の笑顔を向けた。


静かに腰を下ろし隼人は、ゆっくりと口を開いて。



『…何か、ちーちゃんには我慢させてばっかだな。
ダメだな、俺…。』


「そんなことないよ!
昨日だって楽しかったじゃん!
あたしは何も、我慢なんかしてないから!!」


『…ありがとな、ちーちゃん…。』




あんなことになるなら、あたしがもっと我が儘言えば良かったね。


隼人を引き止めることが出来ていたら、

優しい隼人はあたしの所に居てくれたかもしれないのに。



…違うか…


隼人は優しいから、居なくなったんだ…



帰り道も結局、隼人は仕事の電話ばかりをしていた。


漏れ聞こえてくる内容はあまりよくわからなかったが、

隼人が良い顔をしていないことが気になった。


だけどあたしには、何も聞けないから。



隼人にはあぁ言ったが、あたしだってあんまり良い気持ちはしてなかった。


それでも、隼人の所為じゃないから言えなくて。


突然に終わりを迎えた楽しい時間。


また始まる、辛いばかりの日々。


考えるのも嫌になる。


車内を包むのは、いつの間にか重苦しいだけの空気になっていた。





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