粉雪
「何見てんの?!」


目線を感じ、驚いて振り返った。



『…スンマセン。
でも、やっぱ隼人さんが選んだだけありますね。』


穏やかに笑ったマツの顔は、初めて見るような顔で。


いつも隼人と一緒に居るときに見ているような顔じゃない。



「…何言ってんの?
アンタ、馬鹿じゃない?」


だけどあたしにとっては、マツなんか興味もないから。



『…スンマセン…。』


「…アンタ、謝ってばっかだね。
あたしは隼人じゃないよ?」


『…スンマセン。』


相変わらず謝るマツに、諦めてため息をついた。


これじゃちっとも、会話にならない。



『…でも、意外っすね。
隼人さんは今まで、飲み屋の女以外は相手にしなかったのに。』


「悪かったね、普通で。
てゆーか、他の女の話なんて聞きたくないから。」



…何、コイツ…


腹が立ち、マツを睨み付けた。



『…スンマセン…。』


「…あたしと話してたら、殺されるんでしょ?」


『…ハイ、スンマセン…。
でも、マジでアンタは綺麗だと思うから…。』


「いい加減にしてよ!!
あたし、降りるから!!」



“綺麗”


マツに言われ、無性に腹が立った。


ちょうど信号待ちで停車していたため、あたしはドアに手を掛けた。



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