粉雪
『…ちーちゃん、やっぱ隠れてろよ。
警察にだってバレてんだ。
ちーちゃんの存在は、時間の問題だから…。』


「―――ッ!」



食事を終えて帰宅した部屋で、隼人はため息を混じらせた。


こんな状態で隼人と離れるなんて、出来るわけがない。



「…あたしが居たら、邪魔…?」


声が震えてしまう。



『…そんなんじゃねぇよ。
ただ俺は、ちーちゃんが心配なんだ。』


「“ずっと傍に居る”って約束したよね?!」


『俺だって、ちーちゃんと離れるなんて考えられねぇよ?!
でも、危険すぎるだろ?!』


振り絞るように隼人は、そう言った。


そんなこと、十分すぎるくらいにわかってるよ。


でもあたし達は、“一緒に生きていくんだ”って。


何度そう、確かめ合っただろう。




『…俺ら、別れた方が良いのかな…?』


「―――ッ!」



今まで、どんなことがあっても口にしなかった台詞なのに。


ポツリと呟く隼人の声が、物悲しく部屋に消えた。



「…そんなの、嫌だから…!
隼人が別れたくても、あたしは絶対に別れない!!
隼人が居なくなるなら、死んだほうがマシだよ!!」


『…何、言ってんだよ…!
頼むから、“死ぬ”とか言うなよ…!』


隼人の方があたしなんかよりずっと、泣き出してしまいそうで。


苦しくて、そして怖くて。


足元さえ見えない道は、この先続いているのだろうか。



「…お願いだから…一緒に居させてよ…!」


『…ちーちゃん…。』




ねぇ、隼人…


あたしの存在は、隼人にとって重荷だった?


あたしが素直に言うことを聞いていれば、隼人は今もどこかで笑ってた?



ごめんね…?


謝っても謝っても、許されることじゃないよね…?




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