粉雪
あたしが必死で働いて貯めたお金は、

家具やカーテンを買ったら、あっという間に消えてしまった。


敷金や礼金も、自分のお金で出した。


さすがにもぉ、あんまりお金がない。


隼人に貰ったお金は、今もそのままにしてある。



「…仕事、見つけようかな。」


『…良いんじゃね?
働いてたら、少しは気も紛れるだろ。
俺も堅気になったことだし、仕事するわ。』



マツは知らない間に、あたしの家の近くに部屋を借りていた。


相変わらず、毎日一緒にご飯を食べ、お酒を飲んでくれる。




「…何の仕事すんの?」


『…会社でもしようと思う。』


「マジ?!マツが人間使うの?!」



マツが言うには、建設系の会社らしいけど。


人数が多ければ多いほど、儲かるみたいだ。



『…お前、馬鹿にすんなよ。
俺、昔は族仕切ってたんだぞ?
人間使うのは、隼人さんより得意だっつーの!』


「へ~、マツが族ねぇ。
まぁ、隼人は怒るばっかりだもんね。」


少しだけ笑い、セブンスターに火をつけた。


諦めたようにマツは、ため息を混じらせて。



『…そうだよ。
あの人、すぐ殴るんだもん。
よく耐えたよ、俺は(笑)』



そして相変わらず、思い出話に文句一つ言わずに付き合ってくれている。



「…隼人、あたしの前では怒った事なかったのに…。」


『…そりゃ、愛されてるからだよ。』


「知ってる~!(笑)」


『ハッ!うぜぇ!(笑)』



隼人のことは、相変わらず思い出すばっかりだよ。


どーしようもなくて泣いてばっかだけど、

“ちーちゃんは笑ってて?”って言ってくれた隼人の為に、

精一杯頑張ってるんだ。



ねぇ隼人…


見ててくれてる…?



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