粉雪
『―――うわっ!出た!!』


「…アンタ、殺されたいの?
自分から掛けて来たんでしょ?」


突然化け物に遭遇したような声を上げられ、あたしは眉をしかめた。


肌寒さに身を縮めながら、ベッドに腰を下ろす。



『あははっ、違うって!
今学校だし、着信残しとけば掛け直してくると思ったのに!
ちーちゃん出たから、ビビった!(笑)』


「…あぁ、今、保健室だし。」


ベッドに横になろうとしていた体を、再び起き上がらせた。


そして勝手知ったるように近くにあったエアコンのリモコンを持ち上げ、

設定温度を上げる。



『え?どっか悪いの?
風邪??』


あたしの言葉に、隼人はまくし立てるように聞いてきた。



「…“貧血”ってことになってるから。」


『何だよ、ビビらすなって!
サボってんじゃん!(笑)』


そう言うと隼人は、安心したように深いため息をついて。


だけどあたしは、未だにその優しさに慣れることが出来ていない。



「…眠いんだよ。
てゆーか、何?」


無駄に話していると、それだけで体力が消耗しそうだ。



『そうそう!
ちーちゃん、イチゴのケーキとモンブラン、どっちが好き?』


「チョコ。てゆーか、ガトーショコラ。
それ以外は無理。」


『あははっ!選択肢にねぇじゃん!
まぁ、良いや!
それが聞きたかっただけだし♪』


「…何で?」



窓の外を見つめると、心なしか生徒達の笑顔が浮き足立っているように見える。


終業式は、嬉しい行事らしい。


だけどあたしにとっては、どうでも良いことだ。



『クリスマスだから♪
あっ、ごめん!キャッチだ!
また夜、電話するから!頑張ってな?』


早口で言った隼人は、すぐに電話を切ってしまった。


多分、ケーキでも買ってくれるんだろう。


あたしもクリスマス気分には浸れるらしい。


それだけ分かれば十分だった。


布団に入って目を瞑ると、自然と睡魔に襲われた。


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