粉雪
正直、お互い笑って流したが、

毎日電話をして、たまに会ったりしていると、

あたしの考えていることが錯覚なんかではないように感じてしまう。


住んでいる世界が違いすぎるあたし達は、

本当は関わり合ってはいけなかったんだよね。


だけどいつも楽しかったから、そんなことに目を背け続けてた。




♪~♪~♪

『あ、電話だ。
ちーちゃん、バッグ取って?』


「ん~。」


バッグの中の電話が鳴るのは、仕事の話の時だけ。


詳しくは知らないけど、電話が鳴るといつも、

隼人のことが嫌いになりそうになってしまう。


嫌でも、現実を受け止めなければならないから。




―ピッ…

『―――ハイ?
ハァ?!用意出来なかった?
てめぇ、ふざけんなや!
だったら、死ね!
保険金の受取人、俺の名前書いとけ。
ハァ?だったら、臓器売るか?』


「―――ッ!」


今までに見たこともないような怖い顔をしている隼人に、

思わずあたしは唇を噛み締めた。


こんなの、あたしの知っている隼人じゃない。


だけどきっと、こっちが本当の姿なんだ…。




『…俺から逃げられると思うなよ?
どんな手ぇ使っても、追い込むからな!』


隼人は電話を切ると、イラついたように煙草を咥えた。


車の中に、緊張が走る。


包まれる重苦しい空気に、だけど振り払うようにあたしは声を上げる。



「…隼人、信号青だよ?」


『―――ッ!』


だけど、そんな言葉でしか話し掛けられない。


ハッとした隼人は、次の瞬間にはあたしにもわかるほどの笑顔を作る。



『あー、ごめん。
ちょっと、不手際あったわ~。』


そう言うと、バツが悪そうに笑いかけた。


何でこんなに、苦しいんだろう。


何でこんなに、悲しいんだろう。



「…そう…。」



ただ、何も聞きたくない。



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