粉雪
「…アンタ、何やってんの?」


男は咥え煙草のまま、少し目を細めてキッチンで何かを作っていた。



『ん~?チャーハン作ってんだよ。
お前も食うだろ?』


「…いらない。」



変な薬でも入れられた日には、本当にヤバいことになってしまう。




『あぁ、何か食った?』


「…別に。」



本当は、バイトが終わって速攻で帰ったから、お昼から何も食べていなかった。


フライパンの上で踊るご飯の音と、食欲を誘う香りが鼻につく。




『座っとけよ。』


「…どこに?」



この部屋には、テーブルも椅子もない。




『あははっ!だな!
まぁ、適当に?(笑)』



優しく笑う男だと思った。


それが多分、第一印象だろう。


襟足が長く立てられた髪は、イマドキの遊んでいる風の男だと思う。


仕方なく、言われた通りベッドに背中をつけて床に座った。




『出来た!』


そう言うと、男はお皿に大量のチャーハンを盛り、あたしの元に持ってきた。




『取り皿ないけど、適当に食えよ!』


男は床にお皿を置くと、あたしにスプーンを差し出して、向かいに座った。


だけど不審に思いながら、口を開く。




「…いらないって言わなかった?」


『変なもん入ってないから食えって!
チャーハン食ったら風邪治るって、聞いたことない?』



何だ、ソレ…。


この男、馬鹿なのか?



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