粉雪
無意識に取り出した携帯の日付はまだ、あたしの誕生日の日で。


指が勝手に動くように、リダイヤルから隼人の名前を探し出す。



―プルルルル、プルルルル…

『はいよ~。
どした?』


「―――ッ!」


先ほどまでと変わらない隼人の声に、だけどあたしは精一杯で口を開く。



「…隼人、家帰った?」


『後ちょっとしたら着くよ?
てゆーか、ちーちゃん明日も早いし、寝なくて良いの?』


多分車の中に居るのだろうか、後ろから、流行の音楽が聴こえてきた。


先ほどまで、あたしと聴いていた曲だ。


隼人の声を聞いていると、涙が出そうになる。


必死で唇を噛み締めていると、言葉を発することが出来なかった。


何を言えば良いかなんて、わからなかった。


ただ、独りが怖かった。



『おーい、ちーちゃん?
どしたの??』


何も言わないあたしに、隼人は不思議そうに聞いてきた。


瞬間、抑え切れなくて。



「…隼人、助けて…!」


気付いたら、搾り出すように隼人に縋っていた。



『何があったの?!』


「…あたし、捨てられたから…」


一度出た涙は抑えることが出来ず、嗚咽しながら言えたのは、たったそれだけ。


それ以上は何も言えなくて。


ただ、声を殺して泣いた。



『…どーゆーこと?』


だけど隼人は、声を上げる。


『てゆーか今、家に居るんだろ?!
とりあえず、すぐに戻るから!』


すぐに電話は切れ、あたしは携帯を握り締めたまま泣いていた。



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