氷ノ様ナ鏡

箱の中に居る君


その日の君は


真っ白で綺麗だった


どこまでも白い君は

この世の物とは思えなかった



俺はそんな君に

触れたいけど


あまりにも綺麗で

触れられなくて

ただ遠くから見ていた



足が動かなかった



俺は誰よりも

君が好きだった



誰よりも優しくて

穏やかで

真があって強くて

俺を包み込む

そんな君が愛おしかった



だから彼奴等が

今優しく優しく

君に触れて

泣きそうな顔をするのが

酷く疎ましかった


君は俺だけのものなのに





俺はなんでみんなが

悲しんでいるのか

わからなかった





そして俺が君の前に立つ


真っ白で綺麗な君


肌に触れると

少し固くて冷たい


ゆっくりと名前を呼ぶ

君の返事が聞こえそうで

俺は君の手を握る



冷たい



どうしてと兄に理由を

聞いてみたかったけど

きっと俺が望む

言葉じゃないから



すると

知らない人が

横たわる君の

箱の蓋を閉める


俺がすかさず

止めようとしたけれど

取り押さえされて動けない


あの箱から

帰ってくることも


そして君は

灰色になった


青い空に少し滲む灰色に


箱の中で眠る君


俺は君が居なくなった

なんて信じたくないんだ



俺はただ泣いた


泣いて

泣いて

泣けば


君が俺を

抱き締めてくれそうな

気がして泣いた


きっと二度と

帰らないであろう

君を想って






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