青碧の魔術師(黄昏の神々)
「ちょっと! ちょっとシュリ! 待てって! 私の話も聞けって!!」

「問答無用」


シュリは、どうやら本気でこのふざけた親を消しにかかりたいらしく、ちゅうちょ無く右腕を真上に振り上げ、男を指射した。

蛇をかたどった風が、男に襲い掛かる。


「シュリってばマジ本気だったんだ……」


――クスン……父は悲しいよ。息子にこんなに嫌われてるなんて――


小声で呟く声も、やけにクリアに聞こえる。

男はその身を風の蛇に好きな様に巻かせたまま、大根役者さながらに、さめざめと息子であるシュリに訴えた。

内心、舌を出しながら。

だが、息子も一筋縄ではいかない男だった。


「大根役者が……好い加減、ここに来た本当の理由を言え。『創世の魔術師』!!」


シュリの気がピリピリと空気中で震える。

シュリの父の顔がにやけた優男から、一瞬のうちに魔術師の顔に変わり、 彼は、シュリの作った蛇を、手の一振りで消しさった。


「本当にからかいがいの無い息子だねぇ……。くそ真面目も程々にしなね――シュリ」

「あんたは……まだ言うかっ!」


シュリの剣幕に父は慌てて手を振りながら、


「真面目に話すって! 真面目に……」


あせった声をあげた。









「で、わざわざ宇宙(そら)からこの地上迄、何しに来た。イシスを見にきた等と、ふざけた事をぬかすなら、のし付けてお袋の所に叩き帰すからな」


睨み付けるシュリの顔が険しい。

シュリとて解っていた。

この男が、一時でもあの女の下を離れたのだ。



何も無い訳が……無い――――。



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