青碧の魔術師(黄昏の神々)
「マジで、この国の王立図書館の話をしに来たのか」


呆れ混じりの言葉をはいて父を見るシュリに、彼の父はにこりと笑んで、あろうことか否を称えた。


「図書館の話はヒントなだけだよ。一応、忠告迄と思ってね」

「何の忠告だ?」


いっこうに話の見えない父の言葉に、シュリは頭を抱え込む。

まるで謎解き問答の様な父親とのやり取りに、シュリは『このやり取りもいつもの事か』と考えて、息をはいた。


「何の忠告か……って言ったらつまらないよ。推理しなさい、シュリ。」


にっこり笑ってしらを切る父親に、いささかうんざりしてきていたシュリは、彼を残してきびすを返すと、花園を出て与えられた部屋へと帰る為、一歩足を踏み出した。


「もう、行くのかい?」


息子の後ろ姿に、寂しそうな声音で父が話し掛ける。

シュリは返事をする事も無く、手を挙げてひらひらと振って振り返らずに花園を出て行った。


後に残されたのは父親のみ。


「シュリ、検討を祈るよ。でも私は君に幸せになって欲しいんだよ。それが出来るのはあの娘(こ)、イシスだけなんだよ。君はきっと、あの娘を避けるんだろうけどね」


『面白そうだからもう少し残って見ていくかな』

父親は、そう考えクスッと笑うと空を見上げた。

「帰るのが少し遅れるけど待ってて。見届けて帰りたいから……ね」


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