青碧の魔術師(黄昏の神々)
漣とイシスが、漣の張った結界内に居る為、シュリはバイアグヘーをロイに召喚したのだ。

彼等を、彼女を護る為に。


「バイアグヘーか。考えたねシュリ」


イシスを庇いつつ、漣が呟く。

イシスが、変化したロイを見て息を呑む。

彼女の変化を感じ取ったのか、漣がイシスに優しく囁いた。


「あの子達を嫌わないでやってね。特に、シュリの事は……」

「貴方は一体……」


不思議と不安がないまぜになったイシスの表情に、漣はニコッと笑みをみせると、シュリがするのと同じ様に、イシスの頭をくしゃりと撫でた。


「シュリも言ったでしょ。親父って。正真正銘、あれの実父だよ」

「シュリさまのお父様…………!!」


暫し考え、イシスが気付いた事は。


「創成の魔術師様っ!」


漣の二つ名だった。


「あれ〜? 私って有名人だったっけ?」


とぼけた声を上げて笑う漣に、イシスの緊張も解(ほぐ)れていく。


「でも、どうしてシュリさまのお父様が此処に?」


イシスが言いたいのは、400年近く生きているシュリ。

彼の父親が、今まさに此処に存在する事実だ。


「とぉーっくに死んでなきゃいけない私が、何故此処に居るのか気になる?」


漣の言葉に思わずコクンとうなづいて、イシスは彼のプライバシーに踏み込み過ぎたと、気付き慌てて謝罪する。

だが、漣は気分を害した様子も無く、ニッコリ笑った。


「詳しい事は、シュリにも関係してくるから話せないけど、まぁ、手っ取り早く言うと、幽霊の一種……かな?」


言われて、思わずしげしげと漣を見てしまったイシスは、彼の向こう側が透けて見える事に、今さらながらに気が付いた。


「あっ……」

「ねっ」


イシスの声に、漣は相槌を打つと、ふとシュリ達の方に向き直った。


「ごめんねイシスちゃん。何か私達のゴタゴタに巻き込んでしまって……」

「えっ……?」


真剣な表情で、乱入者を睨む漣が、申し訳なさそうに謝ると、イシスは不思議そうに声を発した。


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