福袋買いませんか?
弁ちゃん登場!
う~寒い!コンビニのおでんでも買って帰るか…
塾帰りの正吾は冷たい手をポケットに突っ込み、今月分の小遣いの残りを数え出した。
触った小銭は4つだけだ。
どれどれいくらかなぁ。
なぁんだ350円か。「これじゃあ大したネタは買えないじゃんか」
正吾が鼻をすすりながら小銭をポケットにしまおうとすると「お兄ちゃん、福袋買わない?」と変なオヤジが声をかけてきた。
一体どこから声がするのかと周りをキョロキョロ見渡すと、薄暗い街灯の下でボロボロのブルーシートを広げた上に幾つかの紙袋が並んでいるのが目に入った。
うわぁ…変なのに捕まっちゃったなぁ。正吾の嫌そうな顔など気にしないのかオヤジは大きな声で「ほら、兄ちゃん兄ちゃんこっちおいで!」と遠慮なく声をかけてくるではないか。
仕方なく近寄って行くと、その並んでいる紙袋に福袋の文字が入っているのに気がついた。
「福袋じゃんか…おじさん、これデパートの売れ残り?」
オヤジは呆れた顔で「そんな物と一緒にしないでくれ!これはな、正真正銘の福袋なんだ。お前さんには俺が見えるんだろ?だったらこれを買う資格があるってことだ」
正吾は寒さで垂れてくる鼻水をすすりながら「で?これいくらなの?」ときいてみた。
「今、お前さんが持ってる全財産だ」
正吾はニッカリ笑った。
「俺、350円しか持ってないんだけど?」
「え!?たったそれだけ?今までで一番安い値段だな」
オヤジはがっかりした顔つきだ。
「別にいいんだぜ。他の奴に買って貰えよ俺、今まで福袋なんて買ったことないしな。要らないもん入ってたって邪魔になるだけだし。じゃあね!おじさん」
正吾がそう言った途端「よし!売った、持ってけ泥棒」とオヤジは ヤケクソ気味に叫び声をあげた。
引っ掛かった引っ掛かった!俺って買い物上手じゃん。
「はい、じゃあ350円ね」
正吾はオヤジの手に小銭を置いた。
ん?顔に似合わずスベスベのお肌だなぁ。
正吾は首を傾げた。
「さぁ坊っちゃん!どれにするんだい?」
正吾が紙袋の隙間から中をのぞこうとすると「ちょっとちょっとダメだよぉ、福袋ってのは中が何だかわからないから楽しみなんだ。勘でえらびな、勘で!」
チェッちょっとくらい、いいじゃんか…
正吾が迷っていると一番はじの袋が一瞬カサカサと音をたてた。
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