フミキリ.
あいつだって.....あんなに目を腫らして泣くことなんて無かっただろうに。
全ては俺が悪いのに。
俺が原因なのに、俺は何も償えはしない。誰にも、何も、してやれない。

「こんなバカ息子でごめんな.....」
「生きたかったんだ」
聞いてしまった。見てしまった。
とても儚くて悲しい光景を。
私にはどうしようもない悲しみが押し寄せる。私はただ、修司のお母さんが見えたから声をかけようとしただけだった。
でも、フミキリの前で修司のお母さんは肩を震わせていて、それをとても辛そうな顔をして見ている修司が前で立っていたのを見てしまった私は、声のかけようがなかった。そして、修司のあの言葉を聞いた。それは本当に小さな小さな声で。前にいるお母さんに向けて謝っていたんだ。当然、修司のお母さんは前に立っている修司が見えるはずもなく、声も聞こえる事はなかった。
だから修司のお母さんは手をあわせると、すくっと立って歩いて行ってしまった。前に立っているのに、もう目が合う事はないんだ。修司はこの世界にはもういない人だから。私の頬に一筋の涙が零れた。切ない、儚い、悲しい、苦しい。
今一番泣きたい気持ちなのは修司だろうに、私が大声を出して泣きたくなった。
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