最後の春
「そういえば今日は佐藤さんはいないみたいだな」

先に戻ってきた長原が席に着くなり言い出した。長原が言う佐藤さんとはここモッツァのアルバイトのことで裕たちと同じ年の女性店員のことである。よく２人で来ているせいか顔なじみになり時々話をするようになった。モッツァはファミレスならではのリーズナブルの料金の割りに味には評判がありいつも混雑している。今はランチタイムから過ぎた時間なので客はまばらな様子だった。

「ああ、今日から学校だからバイトは遅番らしい」

長原の問いに裕は答えた。

「なんでお前がそのこと知っているんだ？」

あまりにも普通に裕が答えたので長原は読み始めた雑誌から目線を裕に向けた。

「なんでって言われても前に聞いたから」

裕が普通に答えると長原は「納得」とだけ言い再び雑誌に目線を向けた。

「佐藤さんって誰？女？泉ちゃんの彼女？」

いつの間にか戻ってきていた土田が裕に聞いた。どうして人の名前が出ただけでそこまで考えが発展するのか裕にはわからなかったが

「ここのバイトの人。結構はなしたりするけど残念ながら彼女ではないのだよ土田くん。」
「バイトの人かー。でもどんな人？泉ちゃんのタイプ？」
「どんな人って言われてもそこまで深く話したことはないけど、背が小さくて映画好きしか知らない」

裕が困りながら言うと長原が、

「裕にはすきなやつがいるからなぁ」

とだけ言い。再び雑誌を読み始めた。しかし、その一言が土田の好奇心を大いに刺激したらしい。

「何々！どんな人なの？教えてよ」
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