最後の春
「何を考えてんだ?」

宮田、土田とは弥生駅で解散し長原に誘われモッツァにやってきた。

「何をって?」
「何年の付き合いだと思ってるんだ?」
「ああ、わかってる」

裕はそう言うと水を飲んだ。

「お前の考えてるのはこれだろ?」

長原は長野が書いた広告をテーブルに置き更に映画同好会のノートを出した。

「ああ、」
「色々越えなきゃ行けないもんがあるぜ」
「わかってる」
「本当にわかってるのか?多分俺達が考えてる以上だと思うぞ」
「なら隆は諦めるのか?」
「諦める?」
「俺は嫌だ。自己チューと思われてもいい。でもせっかく繋がった糸を自分で切たくねぇ」
「お前の都合はわかった。向こうの都合を無視してるのもな」
「それもわかってる」

裕がそう言うと、長原は自分の料金を出して店からでていってしまった。裕は後を追わずに一人店内に残った。自分が考えてることはいつか皆に話すつもりだった。でも漠然とし過ぎてまだ話す段階では無いと思っていた。明日会った時にどんな顔で会えば良いのだろう?外を見ると朝の天気とは違って雨が降り始めていた。
< 84 / 92 >

この作品をシェア

pagetop