優しい気持ち
第三章 ベッドの上
部屋の照明は消え、卓上のランプとテレビだけが明かりをくれる。

その人はベッドの上にあおむけに横になっている。私も自然にその場所に歩み寄り、横になる。そしてちらっとケータイを確認する。

「・・・。」

私はそろそろプレイを始めないと、時間がないと思い、ゆっくり呼吸をしているその人に話しかけた。

「残り時間があと二十分ぐらい。十分前になったらケータイがなるから。」

「・・・。」

しばらく待ったが、何の反応も返ってこない。
どうしたんだろう、と思い覗き込むと、大きくゆっくりと呼吸をしている。目も閉じたままの状態だ。

寝てる・・・?

もう少し体を近づけて確認する。

「・・・。」

一定のリズムで打つ呼吸。開きそうもない瞼。やっぱり寝ている様子だった。

「・・・。」

こういう場合ってどうすればいいんだろう。
性欲を満足させないといけないし、そうなるとやっぱり起こさないといけなくて。でも、その人の眠りを見ていたい気もするし、個人的にはいい印象のままその人と別れたい、そんな気持ちだった。

「二十分かぁ。」

突然、口を開いた。
私は慌ててもとの位置に身を戻す。

「寝てた?」

「んー・・・。眠たくて。」

「あと、二十分だよ。」

「うん、分かってる。」

「・・・。」

「もっとこっちおいでよ。」

普通の客なら残り二十分と聞けば、すぐにでも事にかかる。でも、その人は全く慌てる様子もなく、私の体を抱きよせ、ベッドの中央に置き、頭を抱えて枕の上に置いてくれた。そしてその人もまた同じ枕の上に頭を置き、横になった。

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