この想いを君に…
「ごめん、ちょっと外に出るよ」

総一はようやく泰樹を解放して立ち上がった。

「どこへ行くの?」

真由が心配そうに総一を見つめる。

「…何処にも行かないよ。
ただ…外にいるだけ」



まだ4時過ぎだから。

外は寒い。

春ももう終わりとはいえ。

ひんやりとする空気が総一を襲う。

玄関先の壁にもたれて一人、空を見上げる。

もうすぐしたら。

明るくなってくるであろう空を。



早く帰って来て欲しい。

そして、この腕で抱きしめたい。



ただ、それだけだった。
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