この想いを君に…
「祥太郎のお兄さんは…」

もう一つ。

聞きたかった事を聞いてみる。

「どんな人だった?」



祥太郎は手を繋いでいない方の手で髪をかきあげた。



「兄ちゃん?
…顔は俺に似てるらしいけど」

祥太郎は息をゆっくりと吐いた。

「今の俺より背が低かったな。
…性格はキレると危険だったけど基本的には優しかったし、純粋だったと思うよ」

祥太郎は一瞬、瞼を閉じてスッ、と開けた。

「…やっぱり、気になる?」

その言葉にあたしは頷く。

「だろうな〜。
俺なんか、本当の親の顔も知らないし、睦海の今のような感情を抱いたことはないけど…」

そっか、祥太郎は彩子ママの本当の子供じゃない。

けど、あたしのようにいつまでも知らない親の事なんか思っていなかった。

「真由ちゃんという本当の母親がいて、その昔、真剣に付き合った男が本当の父親なら、気になるよな。
しかもそいつも、今の睦海と同じようにサーキットを走ってたしな」

懐かしそうに祥太郎は呟いた。

「…そーちゃん達がどこまで睦海に話しているのか知らないけど」

祥太郎は立ち止まってあたしを見つめた。

「兄ちゃんは高校2年でGP125のシリーズチャンピオンになってるよ。
…睦海、お前が目指すべきはまず、そこだよ」
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