見えない罪と、月
その日は生憎の雨だった。まるでそれは今のセリルの心の中のよう。


「兄さん、それは冗談でしょ?」

「僕が本気でこんな冗談を言うと思っているの?」


テレビも明かりもついていない部屋。響くのは雨の音だけ。

セリルの中で怒りと喜び両方の感情が混沌としていた。その理由はセイルの言葉にあった。

セイルは昨日、ルシェに結婚前提での交際を申し込んだそうだ。

新しい家族が増える反面、ルシェをフィアー一族の逃亡生活へと巻き込む危険。


「俺は嫌だから! 兄さんがそんな我儘言うんだったら俺だってあの殺……」

「ころ?」

「……っ!? 何でもない! だったら俺も我儘通させて貰いたいよ」


セリルはセイルに隠している事を思わず言ってしまいそうになる。

セイルには気付かれていない様子を見て、セリルは一安心した。
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