『短編』思惑〜オモワク〜
奪われる女
 


田宮 敦子は頭が良く、聡明な女だった。


だから、3年間付き合っている恋人の相馬 聡から「気になる娘がいる」と言われた時も冷静に対処した。


「どんな娘なの?」


落ち着いた口調で問い掛けた時、ホッしたような表情をした恋人を敦子は見逃さなかった。


「うん、なんていうか……、放っておけないんだ」


安心したようにその『気になる娘』の話をする恋人を見つめる敦子。


その心の中は、怒りと悲しみで今にも叫び出しそうだった。


--が、そんなことはしない。


出来るはずもない。


優しい聡は争うことを何よりも嫌う。


感情的になることが逆効果だということは、敦子には痛いほどわかっていた。






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