星の涙
「お母ちゃんはズルいわぁ。あたしかてもう15なんやで。自分の身ぐらい自分で守れる」

そんなこと、ヨシには十二分にわかっていた。

年頃の女の子を家から出さないのも、視えるものを無視しろというのも、彼女にとって苦痛だということを。

だがヨシは怖いのだ。

千夏が6歳の頃、霊に誘導されて近くの山まで行き崖から転落したという過去がある。

霊に悪気はなかった。

同年代の小さな小さな少女の霊。

ただ自分を認めてくれる千夏と遊ぼうと山に誘っただけ。

しかし、それがきっかけで千夏の両足は不自由になった。

歩けないわけではないが走ることはできない。

これでは米軍が攻めてきたとき、外にいては逃げることはまず不可能。

標的にされたら100パーセントの確率でアウトだ。

常時防空壕の近くにいなくてはいけない千夏を外に出すわけにはいかなかった。

千夏もヨシがそうする意味をちゃんと理解していた。

足が不自由では他人の邪魔にもなるし、生き延びれないことは承知している。

その上、この足は霊のせいで傷ついたもの。

悪意がなかったにしろ、大事な娘を霊が傷つけたのは事実。

関わって欲しくない気持ちはよくわかる。

でもそれはそれ、これはこれ。

強い意思を持つことも、悪霊を寄せ付けない力も身につけた。

もう昔の自分ではない。

だからこそいつまで経っても口うるさく言うヨシの言葉はうっとおしかったし、自分を信用してもらえていないのだと、心底落胆していた。
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