切なさに似て…
開いた携帯の画面に落ちて来る牡丹雪はすぐ解け、ディスプレイが七色に輝く。

さっと指で水滴を払いのけ、23時をとっくに過ぎているのもお構い無しに、通話記録の一番上に表示された名前を押した。


プップップップッ…。この繋がるまでの時間が焦れったい。

電話の相手は僅か2コールで電話に出た。


「はぁい、信浩?」

受話口に向かって明るく発する。

さっちゃんと会っていた時の冷めた私は、そこにはいなかった。


[どちら様でしょうか?]

よく知った声の主が白々しく答えた。


「うわーっ、何それ。すっごいわざとらしいんだけど?」

そう私が笑い飛ばせば、伸浩も笑い声を上げる。


[お前ね、何時だと思ってんだよ]

「あはは、ちょっとかかっちゃった」

[で…?]

「今から行くから」

[わかった]

「じゃ、後でね。ばーい」

[はいはい、ばーい]

電話を切られ、空しい通話終了の電子音が耳を掠める。


歩き出した私は、雪で濡れた携帯を鞄へとしまい込んだ。
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